top of page

内科-キーワード

意識

意識とは,外界からの刺激を受け入れ,自己を外界に表出することのできる機能を意味する。意識は意識レベル(覚醒度)と認識機能の2つの要素で捉えることができる。療法が正常に保たれた状態を意識清明という。

 

意識を保つ生理機構

意識は大脳皮質と上行性網様体賦活系により維持されている。上行性網様体賦活系は脳幹網様体や視床の非特殊核、視床下部までを含めた経路であり、抹消からの感覚刺激などの入力を受け、大脳皮質を覚醒状態にする。

意識障害の発生機序

脳幹、間脳(視床)、大脳皮質のいずれかが障害された場合、意識障害が起こりうる。

浮腫

水とNaの貯留により細胞外液、ことに組織間液が異常に増加した状態をいう。浮腫の部位により局所性浮腫と全身性浮腫に分ける。

全身性浮腫の発生

心臓性浮腫

諸種の心臓病に基づく心不全の結果として生じる

 

腎性浮腫

ネフローゼ症候群、腎炎、腎不全などの際に生じる

 

肝性浮腫

肝硬変の際に生じる。血中アルドステロン増加、門脈圧上昇などのために腹水が貯留する。

 

内分泌性浮腫

甲状腺機能低下症(粘液浮腫)、月経前浮腫など。

 

栄養障害性浮腫

低アルブミン血症による血漿浸透圧の低下により組織液が貯留する。

 

特発性浮腫

原因不明の浮腫で中年女性に好発する。

機能性頭痛

頭痛の発生が病変に起因しない頭痛を機能性頭痛(一次性頭痛)という。直接命に関わらない頭痛であり、主な種類として片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがある。

症候性頭痛

何らかの病変のために発生する頭痛を症候性頭痛(二次性頭痛)という。直接命に関わることがあり、主な種類としてくも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、慢性硬膜下血腫、緑内障、副鼻腔炎などがある。

心臓の弁膜

心房と心室、心室と動脈の間にはそれぞれ房室弁、動脈弁という弁があって、血液の逆流を防いでいる。右心房と右心室の間は三尖弁、左心房と左心室の間は僧帽弁と呼ばれ、右心室と肺動脈の間は肺動脈弁、左心室と大動脈の間は大動脈弁と呼ばれる。

心臓を栄養する血管

心筋も酸素と栄養を必要とする。そこで心筋組織を養うための特別な血管が備わっている(冠状動脈)。冠状動脈は大動脈弁の直後に大動脈から分岐して、心室や心房の壁に向かう。

心臓の刺激伝導系

心臓には興奮の形成と伝導のために特殊に分化した筋肉(特殊心筋)があり、刺激伝導系を構成している。刺激伝導系は洞結節、房室結節、ヒス束、右脚、左脚、およびプルキンエ線維からなる。

肺循環

心臓から血液を肺に導き、肺で酸素を取り込み二酸化炭素を排出した血液を心臓に戻す系統。(=小循環)

体循環

心臓から肺以外の全身の器官に血液を導き、再び心臓に血液を戻す系統。(=大循環)

心内膜炎

心臓壁の内膜である心内膜の炎症。感染性心内膜炎と非感染性心内膜炎に分けられる。

心外膜炎

心膜炎と同義である。種類は大分類として急性心膜炎と収縮性心膜炎がある。小分類として急性心膜炎の中に特発性心膜炎、感染性心膜炎、膠原病・尿毒症・悪性疾患などに合併する心膜炎などがあり、急性心膜炎は「発熱・胸痛・呼吸困難」などに加え心タンポナーデ症状が出現する。そして、心膜液中のADA活性は結核性心膜炎の際に上昇する。収縮性心膜炎は慢性炎症のために心膜の線維性肥厚~石灰化を生じ、心臓の拡張不全をきたした状態であり、心臓の拡張不全(左心室)のために静脈圧が上昇する。

 

※心タンポナーデ:心膜液が貯留したために心臓の拡張期充満が著しく障害された状態をいう。

心房中隔欠損

心房中隔の発育障害のために、その一部に欠損を生じ、欠損部を通る左→右短絡のために右心が容量性負担を受ける。全先天性心疾患の7~18%にみる。心房レベルにおける左→右短絡のために肺血流量が増加し、労作時間呼吸困難・動悸などを訴え、気道感染を起こしやすい。通常チアノーゼはないが、運動・咳・怒責・啼泣時などに一過性に生じる。

心室中隔欠損

先天性心疾患の中で最も多い(約20%)。心室中隔の一部に欠損があるが、左→右短絡のためチアノーゼはない。進行して肺高血圧を起こすとチアノーゼが出現する。疲れやすい・動悸・息切れ・反復する気道感染を起こし、聴診で全収縮期雑音を認める。

 

Fallot四徴症

肺動脈狭窄・心室中隔欠損症・大動脈騎乗・右心室肥大を四徴とする心奇形であり、先天性心疾患の約10%を占める。チアノーゼ・多血症・ばち指・結膜充血・運動能力低下・運動時うずくまり姿勢・発育低下を見る。低酸素発作として、急に呼吸頻数となり、チアノーゼ増強・失神・痙攣などを起こすことがある。

 

動脈管開存症

大動脈→肺動脈への短絡を生じ、左室は容量負担を受ける。通常チアノーゼはないが、肺高血圧を合併すると生じる。先天性心疾患の約10%を占め、妊娠3か月頃に風疹に罹った母体から生まれた子どもに多く認める。無症状が多いが、場合によって動悸・息切れ・呼吸器系の易感染症を訴えることがある。

 

アダムス・ストークス症候群

心臓リズムの異常のために、めまい・失神発作・痙攣などの脳虚血症状が出現したもの。

心房細動

全脳梗塞例の10~20%に認め、心原性塞栓症の原因の50%が心房細動である。加齢と共に増加する不整脈で、動悸・めまいなどを起こす。この不整脈は僧帽弁膜症・甲状腺機能亢進症などの際に出現しやすいが、基礎疾患が無い例が多い。高率に心房内血栓を生じ、動脈塞栓を起こすため、ワルファリンによる抗凝血薬療法が必要であり、除去には、ジギタリス薬、抗不整脈薬、直流ショック療法などが用いられる。

期外収縮

日常最も起こりやすい不整脈であり、基礎疾患が無い例に機能的に出現する場合が多い。動悸・脈拍欠滞などが症状として挙げられるが、無症状も多く、健常者に見られる期外収縮は通常、無害である。治療には、精神的ストレスの回避やタバコ・アルコールなどの嗜好品を制限する。種類は発生源の部位により虚血性心疾患や心筋症に合併する心室性期外収縮、心房細動などの頻脈発作が起こりやすい上室性期外収縮に分けられる。

高血圧

基準は最高血圧(収縮期血圧)140mmHg以上最低血圧(拡張期血圧)90mmHg以上である。種類は本態性高血圧、二次性高血圧(症候性高血圧)があり、約90%を占めるのが本態性高血圧である。

本態性高血圧

本態性高血圧は遺伝が基盤となり、それに加え食塩過剰摂取・精神的ストレスなどの環境要因が加わって発症する。高血圧の約90%を占める。

死の四重奏

上半身肥満、高血圧症、高中性脂肪血症、耐糖能異常を合せたことである。

症候性高血圧

二次性高血圧と同義である。高血圧の原因となる基礎疾患があり、症状ないし合併症の一部として出現する。種類は腎臓病による腎性高血圧、副腎や甲状腺などの内分泌異常による内分泌性高血圧、心臓や血管の病気による心臓血管性高血圧がある。

喀血

気道出血のことである。すなわち、肺または気管支からの出血である。殆どが下行大動脈の分枝である、気管支動脈が形成する気管支動脈-肺動脈シャントに起因する出血である。通常咳を伴い、血は真っ赤で泡を含むことが多い。呼吸困難を伴うこともある。

吐血

吐血は消化管出血である。胃潰瘍などによる胃あるいは十二指腸からの出血で、血液が胃液による。但し、吐血でも肝硬変などに伴う食道静脈瘤からの出血は、胃液と接触しないため赤い。

ばち状指

上肢・下肢の指の先端が広くなり、爪の付け根が隆起し、凹みがなくなった状態。

MRSA肺炎

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症で生じる。高熱・咳・胸痛・呼吸困難などが出現し、呼吸不全・ショック・心不全・DICを生じやすい。

マイコプラズマ肺炎

肺炎マイコプラズマによる肺炎であり、肺炎の特殊型である。15~20歳の年齢層に好発し、激しい乾性の咳(細気管支炎)がある。

重症急性呼吸器症候群

略称はSARSである。SARSコロナウイルスによる全身感染症である。発熱・倦怠感・筋肉痛などで発病し、乾性咳嗽・呼吸困難が出現、ほとんどの例で肺炎を起こし、その約20%が呼吸管理が必要とし、死亡率は約10%である。

肺結核

結核菌の感染により起こる。結核菌は飛沫核感染(空気感染)であり、人から人への感染はなく、自然界由来と考えられている。初期には微熱・咳・倦怠感・寝汗などが生じる。

肝硬変症

肝機能の程度により、代償型と非代償型に分けられる。原因は肝炎ウイルスによるものが多く、その中で、20%弱がB型肝炎ウイルス、約70%がC型肝炎ウイルスによるものである。男女比は2~3:1と男性に多い。肝硬変患者で死に至ることがあるがその原因となるのが、食道や胃の静脈瘤の破裂・肝不全・肝癌がある。

貧血

血液中の赤血球の数や、赤血球中に含まれているヘモグロビンが不足している状態である。種類は鉄欠乏性貧血・巨赤芽球性貧血(悪性貧血)・再生不良性貧血・溶血性貧血である。

貧血の原因疾患

鉄欠乏性貧血

ヘモグロビン合成に必要な生体内の鉄の不足により生じる。

 

巨赤芽球性貧血

ビタミンB12または葉酸の欠乏によってDNAの合成が障害され、正常な赤芽球が産生されず異常な巨赤芽球が産生され生じる。

 

再生不良性貧血

先天性と後天性に分けられており、先天性ではファンコニ貧血、後天性では薬剤・化学物質・放射線障害・妊娠、そして原因不明がある。その中で最も多いものが原因不明で生じる。

 

溶血性貧血

赤血球が壊れやすくなり、赤血球寿命が短縮することにより生じる。

HIV

AIDS(後天性免疫不全症候群)を発症させるウイルス。

白血病

白血球系幼若細胞が癌化した状態。急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病に大別される。骨髄に高度な白血病細胞浸潤、貧血、血小板減少による出血傾向、脾腫、播種性血管内凝固症候群(DIC)、好中球減少による感染症などがみられる。

BMI 

Body Mass Index。肥満の判定法として、用いられる体格指数。体重(kg)/身長(m)²として算出、BMI 22を基準値として、BMI 25以上を肥満と判定する。更に、BMI 25以上で、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの健康障害が認められるか、内臓脂肪が多い場合には、“肥満症”として治療が勧められる(日本肥満学会1999)。BMIは体脂肪量とよく相関し、国際的に広く普及している。

神経性食思不振症

若年女性に多い。対人関係などの精神的外傷体験を契機とすることが多い。極端な食欲低下、拒食によるが、時に嘔吐や過食、異食といった食行動の異常を伴うことがある。高度のるい痩、無月経を伴うが腋毛、恥毛の脱落はまれで、活動水準はむしろ亢進することが多い。

糖尿病

Diabetes mellitus(DM)。インスリンの作用不足によりおこる代謝異常である。インスリンは、膵臓のランゲルハンス島(β細胞)より分泌される生体で唯一の血糖低下作用を有するペプチドホルモンで、その不足により高血糖をきたす。過剰な血糖は尿中に排泄され、糖尿病の語源(diabetes:多尿、mellitus:甘い味)となっている。2002年度に厚生労働省が行った糖尿病実態調査では、我が国の成人の6人に1人が血糖値の異常を指摘されている。

1型糖尿病

膵臓のβ細胞の破壊性病変によりインスリン欠乏を生じるもので、若年者で急激に発症する自己免疫機序を介するタイプと、特発性のタイプがある。この型の糖尿病は、最終的には絶対的なインスリン欠乏に陥り、インスリン依存状態となる。

2型糖尿病

従来、インスリン非依存型糖尿病と呼ばれていたタイプで、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性が発生に関与している。このタイプは、中高年で過食、運動不足、肥満、ストレスなど、主として生活習慣の乱れを契機として発症する。

症候性糖尿病

二次性糖尿病。種々の基礎疾患が引き金になり糖尿病をきたすもの。膵疾患や内分泌疾患など種々の疾患に合併して発症する糖尿病である。基礎疾患の津領で糖尿病も一定程度改善する。糖尿病の遺伝素因を持つものや長期間にわたり糖尿病が持続すると基礎疾患の治療によっても糖代謝異常は残る。いわゆる特発性と二次性糖尿病の鑑別は困難なことが多い。両者の鑑別の手がかりの一つは糖尿病の家族歴であり、もう一つはインスリン分泌の初期反応である。経口ブドウ糖負荷時のインスリンの初期分泌を計算すると2型糖尿病ではほとんどが低下している。二次性糖尿病では初期分泌は良好に保たれていることが多く鑑別の参考になる。しかし絶対的な鑑別法ではない。

内分泌疾患による糖尿病

さまざまな内分泌疾患で高率に糖代謝異常をきたす。成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、副腎髄質ホルモンなどインスリン拮抗ホルモンが過剰になるとインスリン作用不足となる。

その他

ステロイドなどの薬剤や感染症により発症する糖尿病がある。

糖尿病の合併症

毛細血管障害で、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症がある。また、動脈硬化性疾患として、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症がある。糖尿病性壊疽は難治性潰瘍~壊疽で、下肢に好発し、神経障害を合併するため痛みが少なく、感染を伴いやすい。糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症と共に糖尿病特有の三大合併症の一つで、代謝障害による多発性神経障害(手袋・靴下型神経障害、振動覚低下、こむらがえりなど)、自律神経障害(便通異常、起立性低血圧、排尿障害、発汗異常など)、および循環障害を主因とする単一性神経障害(外眼筋麻痺で複視や眼瞼下垂など)がある。

糖尿病の診断基準

⑴初回検査で、下記のいずれかの基準を認めた場合には糖尿病型と判定する。

①空腹時血糖≧126mg/dl

②75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)2時間値≧200mg/dl

③随時血糖値≧200mg/dl

④HbAlc≧6.1%(JDS値)

別の日に再検査を行い、再び糖尿病型が確定すれば糖尿病と診断する。(HbAlcのみの反復検査による診断は不可)

  

⑵血糖値が上記①~③の糖尿病型で、次のいずれかの条件をみたす場合には、糖尿病と診断できる。

①糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)がある場合

②確実な糖尿病型網膜症が存在する場合

低血糖

糖尿病の薬物治療中には、高血糖に伴う昏睡とは対照的に、血糖低下による意識障害が出現する。血糖低下に伴う平均的な臨床経過は、血糖値がおよそ80mg/dl以下に下がると、まず空腹感、徐脈などの副交感神経症状が現れ、60mg/dl以下になると、あくび、倦怠感、思考力低下などの大脳機能低下症状が現れる。さらに、血糖値が40mg/dl以下になると、頻脈、動悸、発汗などの交感神経症状が出現し、20mg/dl以下になると昏睡に陥る。治療にはブドウ糖とグルカゴンを用いる。糖尿病患者に薬物療法を実施する際には、常に低血糖がおこる可能性があり、治療開始前には低血糖症状とその対処方法(糖分の補給など)を十分に説明しておく必要がある。

糖尿病性昏睡

①糖尿病性ケト・アシドーシス

インスリン療法の中断や感染症などが誘因となって発生する昏睡で、1型糖尿病に多い。前駆症状として、激しい口渇や悪心、腹痛などの胃腸症状が先行する。検査所見では、高血糖と共に血中ケトン体が増加し、血液pHが低下する(ケト・アシドーシス)。昏睡時の他覚所見としては、アセトン臭やKussmaul大呼吸が特徴的である。治療には、即効型インスリンの持続点滴と十分な輸液が必要となる。

  

②高浸透圧性非ケトン性昏睡

比較的軽症例の高齢者に起こりやすい昏睡で、利尿薬の使用や感染症などが引き金となって発症する。他覚的には、高血糖と共に脱水が著明で、血漿浸透圧が上昇する。血中ケトン体や血液pHの低下はみられない。治療には即効型インスリンの持続点滴と低張輸液(0.45%NaCl)が用いられる。

痛風

尿酸代謝障害による高尿酸血症と、それに続発する痛風発作と呼ばれる急性関節炎発作を特徴とする代謝疾患である。尿酸は、核酸(プリン塩基)の最終代謝産物であり、腎臓から排泄されるが、尿酸の産生過剰や排泄障害があると高尿酸血症をおこす。また、尿酸は水に溶けにくいため、高尿酸血症が持続すると過剰な尿酸は組織に沈着して、関節炎を引きおこす。痛風(特発性痛風)は遺伝素因(体質)を背景にして、肥満、アルコール、ストレスなどが誘因となって発症する疾患で、30~50歳の壮年男性に多い。

骨粗鬆症

骨に対する機械的刺激(体重支持、筋肉の牽引など)がなくなると、骨の代謝が低下し、カルシウムの排泄が亢進します(骨の脱灰)。当然、骨折しやすくなります。

視床下部症候群(視床症候群)

①側視床の出血や梗塞により、対側半身の全感覚障害、強いしびれ、痛み(視床痛)と対側の片麻痺、不随意運動などがみられることがある。視床痛は激しい自発痛のほか、風や衣服の刺激で誘発される痛みや痛覚過敏を伴う。

 

*視床は感覚の中継点である他に運動調節にも働くため、障害されると不随意運動がみられることがある。また、視床に近接する内包に障害がおよぶと、対側の片麻痺がみられる。

②デジュリン・ルーシー症候群。病巣と反対側の知覚障害と、耐えがたい異常な自発痛(灼熱痛:視床痛とよばれます)、不全片麻痺、運動失調、同名半盲からなるものです。視床膝状体動脈の出血・閉塞が原因とされています。

下垂体前葉機能亢進症

Cushing症候群は①下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌過剰によるもの(産生腺腫、過形成:Cushing病)②異所性ACTH産生腫瘍③副腎皮質腫瘍(腺腫、癌)に大別される。

 

Cushing病もしくは症候群では、約半数の症例に筋力低下をみる。発症は緩慢で、近位筋優位の筋委縮と筋力低下が特徴で上肢より下肢に強く、Gowers徴候をみる。下垂体や異所性腫からの過剰ACTH分泌による場合と副腎皮質からのグルココルチコイドの過剰産生の場合とがある。いずれも過剰のグルココルチコイドが筋肉細胞内のレセプターと結合し核内に入り、蛋白合成のバランス異常を引き起こし筋肉の障害が生ずる。

先端巨大症

多くの場合、成長ホルモン(GH)産生下垂体腺腫が原因で身体の過成長を伴う。骨端線閉鎖後の発症では先端巨大症となるが閉鎖前では巨人症となる。四肢先端部の巨大徴候、下顎突出などに加えて、頭痛、視力障害、発汗などを呈する。神経・筋障害を併発することも多く、単ニューロパチーとしては手根管症候群がしばしば認められ、また多発ニューロパチーでは手足の痛みや異常感覚とともに感覚・運動型を呈する。末梢神経の肥厚、筋力低下を認め、腱反射は減弱する。筋障害も起こり易疲労性、筋力低下が認められる。多くの場合、内分泌障害の改善により症状が改善する。

下垂体前葉機能低下症

特発性、下垂体炎、下垂体の腫瘍、頭蓋咽頭腫などの原因で下垂体前葉ホルモンの分泌が低下した状態。

<症状>

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏

→全身倦怠感、食欲不振、低血糖、低血圧

  

甲状腺刺激ホルモン(TSH)低下

→耐寒性低下、不活発、皮膚乾燥、徐脈、脱毛

  

性腺刺激ホルモン(LH、FSH)分泌低下

→無月経、性欲低下、体毛の脱落

  

プロラクチン(PRL)欠乏

→乳汁分泌低下

 

成長ホルモン(GH)分泌低下

→小児期に発症すると、ソマトメジンC(IGF-I)が低値となり、成長が障害され、成長ホルモン分泌不全性低身長症となる

視床下部-下垂体後葉系機能欠損

抗利尿ホルモン(ADH)=バソプレシン(AVP)の分泌低下により水の再吸収能低下をきたし、著しい多尿をきたす。この疾患を尿崩症という。

甲状腺機能亢進

甲状腺ホルモンが過剰に産生、分泌されるために、種々の臨床症状をきたす。

   

Basedow病

自己免疫疾患のひとつで、甲状腺刺激抗体(TSAb)、TSH受容体抗体(TRAb)などが産生され、TSH受容体と結合して甲状腺刺激作用を示すために発症する。男女比は1:4~5と女性に多い。主な臨床症状は多汗、手指振戦、体重減少、四肢麻痺、心房細動、女性では月経不順。三主徴:びまん性甲状腺腫、頻脈、眼球突出。

甲状腺機能低下

甲状腺ホルモンの分泌、作用が低下する。症状として、皮膚の乾燥・蒼白・浮腫(粘液水腫)。易疲労感、舌肥大、嗄声、便秘、寒がり。精神活動の低下(無気力、嗜眠、記憶力低下)。

  

クレチン症

先天性甲状腺機能低下症。乳児1/2000の頻度で発生する。新生児マススクリーニングの対象疾患である。遷延性新生児黄疸、哺乳困難、無欲顔貌、傾眠、巨舌、腹部膨満、臍ヘルニア、低体温(35℃以下)、浮腫、徐脈、貧血などが数か月のうちに徐々に出現してくる。3~6か月ころには精神運動発達の遅れが目立ってくる。

ネフローゼ症候群

種々の病的機序により糸球体基底膜の蛋白透過性が異常に更新し、大量の血清蛋白が尿中に失われるために低蛋白血症を生じ、高度の浮腫をおこす症候群である。

  

成人ネフローゼ症候群の診断基準

①蛋白尿(1日3.5g以上)

②低蛋白血症(血清蛋白量6g/dl以下で、血清アルブミン量3g/dl以下)

③脂質異常症(LDLコレステロール140mg/dl以上、TG150mg/dl以上)

④浮腫

  

これらの内、①②は必須である。二次性ネフローゼ症候群とは、糖尿病、全身性エリテマトーデス、アミロイドーシスなどにより二次的に生じるものをいう。

アレルギー反応の分類

Ⅰ型(即時型、アナフィラキシー型)

IgE(レアギン)が関与する。血管周囲の肥満細胞(mast cell)表面に付着したIgEに抗原が結合すると、細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が遊離し、平滑筋の収縮や粘膜の浮腫などの症状を示す。「気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーショックなど」

Ⅱ型(細胞傷害型)

細胞膜(たとえば赤血球膜)や細胞膜の付着物質が抗原となり、それに抗体が結合して細胞自身が融解する。溶血性貧血、血小板減少性紫斑病(ITP)など

Ⅲ型(免疫複合体型、アルザス型)

傷害を受ける細胞からは離れたところで抗原と抗体が結合して免疫複合体を形成する。そしてこれが補体系の反応を引き起こして特定臓器の障害をもたらす。糸球体腎炎など

Ⅳ型(遅延型)

抗原に感作されたT細胞リンパ球が引き起こす細胞性免疫反応である。24~48時間後に反応が現れる。ツベルクリン反応、移植免疫、接触性皮膚炎、肉芽腫形成疾患(結核、ハンセン病、サルコイドーシス)など

Ⅴ型(刺激型)

細胞表面レセプターへの自己抗体の結合により、細胞が機能亢進状態となる。Basedow病など

Behçet病

 アフタ性口内炎、眼症状、皮疹、外陰部潰瘍を主徴とし、再発、緩解を繰り返す炎症性疾患である。HLA-B51遺伝子との相関が指摘されている。好中球機能亢進がある。口腔粘膜、血管壁に対する自己抗体の存在から免疫異常説、ウイルス説、特殊の連鎖球菌感染説などがある。

【参考文献】

著:「コメディカルのための内科学」

著:「病気が見えるvol.7脳・神経」

監: 廣瀬肇「言語聴覚士テキスト 第2版」,2012年

bottom of page