​臨床神経・疾患別

多発性硬化症

炎症性脱髄疾患の一つ。時間的・空間的に多発するのが特徴である。若年成人に発症し再発・寛解を繰り返すことが多い。

特異的な初発症状はないが、視力障害が比較的多く、球後視神経炎の20~50%は多発性硬化症に発展する。病変は脳室周囲に接して後発し側脳室周囲の病変は数多く見られる。多発性硬化症(MS)は、中枢神経系脱髄疾患の中で最も多いものである。主として若年成人をおかす疾患であり、大脳、小脳、脳幹、脊髄、視神経などの中枢神経組織に多巣性の脱髄病変が生じる。そして、これらの病変に基づく多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す。すなわち時間的・空間的に多発性の経過を示すことを特徴とする疾患である。

ギラン・バレー症候群

炎症性ニューロパチーの代表疾患である。何らかの先行感染によって活性化された自己免疫機構が抹消性髄鞘を障害し、多発性の脱髄病巣をつくる疾患である。感冒や胃腸炎から1~3週間後に急に筋力低下と感覚障害が発症し蛋白細胞の解離が特徴的である。

感染の1~2週間後に引き起こされる。急性の運動麻痺を主徴とする炎症性脱髄疾患。先行感染として最も多いのは細菌性腸炎を起こすCampylobacter jejuniである。顔面神経麻痺、嚥下障害、構音障害、深部感覚障害、呼吸筋麻痺を呈することもある

 

パーキンソン症候群

パーキンソン病を含めてパーキンソン症状を示す病態をいう。ドパミン作動性黒室線条体神経線維の機能低下が原因で起こる。進行性の疾患で治療はレボドバ・ドパミン作動薬を投与すると症状の改善が見られる。発症後10年程度は独立した日常生活が可能である。それ以後は介助が必要となり15~20年くらいで臥床生活となることが多い。

 

三大症状

静止時振戦・固縮・無動

 

他の症状

姿勢反射を加えたものを四大症状という。その他には寡動・歩行障害・仮面様顔貌など。

上位運動ニューロン障害

大脳皮質~白質の障害である。上位運動ニューロンの障害部位は交叉前なので運動麻痺は病巣側と対側に現れる。

麻痺の強さ:初期は完全麻痺でも次第に回復し不全麻痺に終わる傾向がある。

麻痺の部位:対側の上下肢及び顔面が麻痺する。

筋緊張:初期に弛緩、徐々に痙性が強くなる。

反射:深部反射は亢進し表在反射は消失する。また、病的反射が現れる。

筋委縮:見られないが廃用性の委縮は起こる。

下位運動ニューロン障害

核~筋の神経路の障害である。下位運動ニューロン運動は交叉後なので麻痺は病側に現れる。

麻痺の強さ:完全麻痺となり回復することは難しい。

麻痺の部位:病側の上下肢が単独で麻痺を起す。

筋肉の緊張:直ちに弛緩し、検者が力を加えても抵抗がない。

反射:反射の回路が障害されるため一切の反射が消失ないし減弱する。病的反射はない。

筋委縮:早期から筋肉の委縮が生じ3カ月以内に筋肉容積の70~80%が減少する。

痴呆

痴呆とは一般に「後天的な脳器質障害により生じた慢性的な知的機能障害」と定義される。痴呆の代表的な診断基準では、痴呆に伴う知的機能障害についてかなり明示され、その中で記憶障害は最も重視されている。しかし、記憶障害の存在だけで痴呆があるとはいえない。例えば、コルサコフ症候群の典型例では知的機能の低下はしばしばみられないし、記銘力は加齢に伴い一定の範囲で障害されうる。健忘以外の症状で始まる痴呆疾患も存在する。記憶障害だけでなく、注意力障害や視覚認知など種々の認知機能の障害、行為や行動の障害、さらにそれらの障害に対する患者自身の認識についてなど、幅広く症状を把握することが痴呆の理解には必要である。

アルツハイマー病

以前は初老期(65歳未満)に発症した場合をアルツハイマー病、老年期(65歳以上)に発症した場合をアルツハイマー型老年痴呆と呼んだが、両者は病因論的に同一の疾患と考えられるので、現在ではアルツハイマー病と総称される。DSM-Ⅳ分類によるアルツハイマー病の定義は、記憶障害を主軸として、そのほかに失語、失行、失認、遂行(実行)機能の障害が1つ以上みられ、社会的または職業的機能が著しく障害され、これらの症状が緩徐に進行し、かつ脳血管障害をはじめとする記憶や認知機能の障害を引き起こす他の疾患がみられない原因不明の疾患と要約される。

血管性認知症

大脳皮質下、あるいは皮質・皮質下にまたがって広範あるいは多発性の病変を生じた場合、さらに認知機能に重要な部位に限局性の病変が生じた場合などに、認知症状態を呈する病像である。血管性認知症の概念は単一の疾患概念ではなく、むしろ包括的集合概念であるため、その臨床像は多岐にわたる。血管性認知症の中で多発梗塞性認知症ないしビンスワンガー型脳症(ビンスワンガー病)の典型的な臨床像では、感情失禁やうつ状態などの精神症状や、痙攣・片麻痺・尿失禁・深部反射亢進・病的反射・仮(偽)性球麻痺などの神経症状・徴候を伴っていることが多い。ある機能はおかされているが、他の機能は保たれている。いわゆる「まだら認知症」の状態を示す。

 

血管性痴呆の病理

脳血管性痴呆はアルツハイマー病と並んで痴呆の原因として最も頻度が高く、脳血管病変(脳梗塞や脳出血)、心停止による脳虚血や無酸素状態から生ずる痴呆である。

脳血管性痴呆には以下の病型がある。

①灰白質と白質を含む多発性の大きな脳梗塞による痴呆

②脳の一部であるが、脳の機能に重要な作用をなしていると考えられている部位の病変によって起こる痴呆

③脳の小血管病変によって起こる皮質あるいは皮質下性(基底核や視床などの皮質下に存在する部位)の痴呆

特に多数の小梗塞が大脳半球の白質に存在し、白質のびまん性の脱髄病変(髄鞘の崩壊)を伴った場合はビンスワンガー(Binswanger)病と呼ばれる(痴呆は大脳半球の白質の病変によるものであり、皮質病変による痴呆とは異なる)。

④心停止、重篤な低血圧あるいは分水界領域の限局性虚血によって二次的に起こった全般性脳虚血によるもの

⑤慢性硬膜下血腫、くも膜下出血の後遺症などによる出血性痴呆

⑥上記病変の混在や他の未知の要因によるもの

レヴィ小体型認知症

変性性痴呆において、レヴィ小体型痴呆はアルツハイマー型痴呆に次いで多いとされる痴呆である。これは多数のレヴィ小体により特徴づけられる痴呆疾患の総称であり、その中心をなすのがびまん性レヴィ小体病である。びまん性レヴィ小体病の主症状は、痴呆およびパーキンソニズムであり、注意や明晰さの著明な変化を伴う認知機能の変動、構築され具体的な内容の繰り返される幻視体験、抗精神病薬への過敏性などの特徴がみられる。

ピック病

ピック病の主病変は前頭葉と側頭葉にあり、その特徴は発動性の低下あるいは欲動的制止の欠如と表現される意欲と情動の障害である。その一方、記憶障害は目立たず、視覚認知、構成能力、計算力など要素的な認知能力は保たれやすい。病識は発病初期から失われることが多い。

滞続言語→会話と質問の内容とは無関係に同じ言葉を繰り返す

ハンチントン病

常染色体優性遺伝性疾患である。成人期に発症し、進行性の舞踏運動をはじめとする不随意運動と性格変化、痴呆を伴う疾患である。パーキンソン病様の症状を示す固縮型や20歳以下に発症する若年型も少数にみられる。

プリオン病

以前は遅発性ウイルス感染症と考えられていたが、現在はプリオン(核酸を持たない蛋白)により伝播することが証明されている。神経細胞膜糖蛋白であるプリオン蛋白の、不溶性で蛋白分解酵素抵抗性である構造異性体の脳内蓄積が原因と考えられている。

①BSE(牛海綿状脳症)

②クロイツフェルト・ヤコブ病

③狂牛病

クロイツフェルト・ヤコブ病

中年以降に発症する。急激に進行する認知症、四肢振戦、硬直、ミオクローヌス、意識障害を認め死に至る。病理所見では神経細胞の脱落とアストログリアの増生を認め、その形態から海綿状脳症と診断される。脳波では周期性同期放電を示し、画像診断では急速に進行する脳萎縮が確認される。

​シャイドレーガー症候群

Shy-Drager症候群(SDS)

自律神経症状(起立性低血圧、食事性低血圧、排尿障害、便秘、発汗障害など)を初発症状とし、進行するにつれ小脳症状、パーキンソニズムなども出現する。現在は多系統萎縮症(MSA)に包括されている。

急性硬膜下血腫

外傷により、硬膜とくも膜との間に生じた血腫である。高度の脳挫傷を伴うことが多い。出血源は架橋静脈あるいは脳挫傷に伴う脳表血管である。側頭・前頭・頭頂部が好発部位である。

慢性硬膜下血腫

通常、軽微な頭部外傷後、数か月(1~3か月)して発生する硬膜下血液貯留液が発生したものである。血腫は被膜を有し、非凝固性である。50~70歳の男性に多い。

頭蓋内圧亢進症

急性と慢性では症状が異なる。急性の場合、自覚症状として激しい頭痛、悪心・嘔吐、他覚的症状としてCushing現象(徐脈、血圧上昇)、意識障害、網膜出血、散瞳、けいれんがある。慢性の場合、自覚症状として頭痛(睡眠開けに多い)、悪心・嘔吐、視力障害、めまい、他覚的症状としてうっ血乳頭、外転神経麻痺、記憶障害、人格変化がある。重篤な場合、脳ヘルニアがみられる。

正常圧水頭症

歩行障害、痴呆、尿失禁を3主徴とする。CTでは脳室拡大と脳室周囲の低吸収域を示す。RI cisternographyでRIが脳室内に逆流し、24時間以上停滞するもの、あるいは48時間後でも傍矢状部にRIの集積がみられないもの。治療として、脳室腹腔短絡術あるいは脳室心耳短絡術を行う。

グリオーマ

神経膠腫。グリア細胞から発生し、原発性脳腫瘍の約30%を占める。大脳半球の局所症状と頭蓋内圧亢進症状が生じるが、腫瘍の増大速度の差により各腫瘍型で初発症状が異なる。脳表近くで比較的ゆっくり発育する悪性度の低い星細胞腫(astrocytoma)は成人(25~49歳に好発)の大脳半球、特に前頭葉、次いで側頭葉、頭頂葉に多く、徐々に局所症状が拡大する。一方、脳白質に急速に脳浮腫を伴って浸潤性に増大する悪性度の非常に高い神経膠芽腫(glioblastoma)は45~64歳に好発し、頭蓋内圧亢進症状としての頭痛が最も多い。

ウェルニッケ脳症

ビタミンB₁欠乏が原因であるが、慢性アルコール中毒(ビタミンB₁の吸収が起こる)、栄養障害、不適切な輸液などに合併する。病理学的には乳頭体、視床の背内側核、第三、四脳室および中脳水道周辺に病変がみられる。急性期には意識障害(せん妄)、運動失調、眼球運動障害、末梢神経障害が起こる。慢性期には健忘、失見当識、作話などのコルサコフ(Korsakoff)症候群を示し、重症例や経過の長い例は痴呆に近い症状を呈する。

びまん性脳損傷

Diffuse brain injury:DBI。通常の局所性損傷とは異なり、回転加速度を生ずるような衝撃による損傷で、脳幹部を含めた脳梁部まで及ぶ損傷を生ずる。

典型的なCT所見は、白質、脳室上衣下や脳室内、基底核部、脳梁および脳幹に出血を認める。

オリーブ橋小脳萎縮症

OPCA。中年以降に発病し、進行性の小脳失調を呈し、オリーブ核、橋の灰白質、中小脳脚の変性、萎縮をきたす。脊髄小脳変性症の中で最も多く、全体の35%を占める。

初期には起立・歩行の失調が主体で、進行とともに四肢の協調運動障害、眼振、不明瞭発話、断綴性発話といった構音障害などが加わる。5年以内に錐体外路症状が加わることが多く、進行とともに小脳症状は目立たなくなる。

進行性核上性麻痺

進行性の核上性眼球運動麻痺(注視麻痺)、項部ジストニー、偽性球麻痺、認知症を呈する。初発症状は歩行障害、頻回の転倒、眼症状(物が見えずらい)、性格変化、記銘力低下であることが多い。体幹に固縮が強く四肢には比較的軽い、認知症の程度は軽く、忘れっぽさや思考の緩徐化、情動・性格の変化などが特徴で、皮質下認知症と呼ばれる。

もやもや病

Willis動脈輪を構成する両親の内頚動脈終末部から前・中脳動脈分岐部にかけての血管が徐々に狭窄・閉塞すると(原因は不明)、脳への血流が不足し、これを補うために側副血行路がつくられる。この側副血行路(もやもや血管)による代償が不完全であるために、脳虚血が生じたり、脆弱であるため破錠しやすく脳出血が生じたりする。

重症筋無力症

​骨格筋アセチルコリン受容体に対する自己抗体により神経筋伝達が障害され筋力低下を引き起こす自己免疫疾患である。症状は易疲労性と筋脱力が特徴で眼瞼下垂、外眼筋麻痺、複視などの眼症状は初発症状として5~6割の症例で出現する。また構音障害、嚥下障害を認める。構音障害は弛緩性、開鼻声

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