​高次脳機能・疾患別

アルツハイマー型認知症

認知症を主体とし、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑、神経原繊維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。認知症の中で最も多い。治療薬は、現在のところ、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の2種類がある。

 

初期(1~3年)は、海馬と側頭葉の萎縮がみられ、症状として新しいことが覚えられない記銘力障害、物の名前を思い出せないなどの記憶障害、年月日の感覚が不確かな時間の見当識障害、物とられ妄想、被害妄想、自発性の低下でだらしなくなるが、身辺の自立は可能である。中期(2~10年)は、頭頂葉の萎縮も加わり、新しいことだけでなく、古い記憶も障害される。また、自分の家を認識できなくなる場所の見当識障害、徘徊、着衣失行、流暢性失語などがみられ、日常生活に介助が必要となる。後期(8~12年)は、前頭葉・後頭葉の萎縮も加わり、記憶のほとんどを失い、意思の疎通が困難となる。肉親がだれだかわからなくなる人の見当識障害、尿便失禁、異食、歩行障害、神経症状が現れ、最終的には無動・無言をなり、寝たきりになる。

脳血管性認知症

脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)によって生じる認知症。全認知症の20~30%を占め、アルツハイマー型認知症の次に多い。脳卒中発作に伴い急激に発症したり、新しい梗塞が加わる度に段階的悪化を示したりする。認知症状(まだら認知症)の他、障害部位により局所神経症状(運動障害、感覚障害、偽性球麻痺{構音・嚥下障害など}、脳血管性パーキンソニズムによる小刻み歩行など)を伴う。抑うつ、自発性の低下、遂行機能障害、夜間せん妄、情動失禁、頻尿・尿失禁などがみられる。

前頭側頭葉型認知症

特徴的な人格変化、行動異常(自発性の低下、感情鈍麻、脱抑制、常同行動など)がみられ、進行すると前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表疾患にPick病がある。病識は欠如している。

レビー小体型認知症

Lewy小体とは、神経細胞に出現する円形の細胞質封入体で、関係疾患にParkinson病とLewy小体型認知症がある。

老年期に発症し、進行性の認知機能障害とともに幻視などの特有の精神症状とパーキンソニズムを呈する神経変性疾患である。近年、疾患の認識の広がりに伴い、有病率の高さが明らかとなり、注目されている。

治療可能な認知症

神経変性疾患は不可逆性に進行し、治療も困難であることが多い。しかし、その他の認知症の中には、早期に治療を行うことで劇的に認知機能が回復する場合がある。このような認知症を治療可能な認知症と呼ぶ。

正常圧水頭症(NPH)、甲状腺機能低下症、神経梅毒、HIV脳症(AIDS脳症)、慢性硬膜下血腫など。

健忘症

健忘症とは陳述記憶(意味記憶・エピソード記憶)の障害である。前向性健忘症と逆行性健忘の2種類がある。前向性健忘(記銘障害)は新しいことを覚えられない。逆行性健忘(想起障害)は発症以前に覚えたことを思い出せず、比較的最近の記憶が障害される。

一過性全健忘

一過性に健忘症候群を引き起こす、一過性全健忘は、前向健忘と逆向健忘が突然起こり、その後ほぼ24時間で回復する。前向健忘は非常に強いが、健忘以外の認知機能障害はほとんど認められない。原因については、脳循環代謝の検討から、発作中の両側側頭葉内側部の機能障害を指摘する説もあるが、いまだに解明されていない。

純粋失読

視覚障害、視覚失認、失語症、注意障害、知能障害によらない読みだけの障害。軽度の喚語困難、漢字の書字障害、右同名半盲、色名呼称不能が頻繁に合併する。逐次読み、運動覚促通効果が特徴。【損傷部位】後頭葉内側面と脳梁、側脳室後角後部から角回間の白質

純粋失書

運動障害、失語症、失行、構成障害、注意障害、知能障害等によらない書字のみの障害。書字は漢字、仮名とも障害され想起困難や錯語が見られる。病巣は上頭頂小葉第二前頭葉後部(Exherの書字中枢)【損傷部位】左上頭頂小葉、左中前頭回後部

失読失書

ほとんど正常な発話や聴理解に対し中等度以上の読み書き障害。漢字の語性錯語が多く特徴的である。文字をなぞっても読めない、視覚経路以外で文字情報を得ても読めない。自発書字と書取りが同様に障害される。

【損傷部位】左角回、左側頭葉下部

構成障害

細部を明確に知覚し対象の構成部分の関係を把握して正しく合成することを要する組合せ、または構成の活動障害

症状:左右半球どちらかの損傷、後方病変でも出現するが、損傷半球によって症状が異なる

(左半球損傷)…細部が欠落した単純な絵となり、

(右半球損傷)…空間的関係が崩壊した絵となる

検査法:積み木やマッチ棒による構成や模写

バリント(Balint)症候群

精神性注視麻痺、視覚性注意障害、視覚失調を3徴候とする

精神性注視麻痺:視線別の対象に向けて適切に移動できない、正確に固定できない症状

視覚性注意障害:視野の中心付近の1つの対象しか見えない症状

視覚失調:視覚対象を注視した状態でもそれをつかむことが出来ない症状

【損傷部位】…両側頭頂-後頭領域損傷でおこる

統覚型視覚失認

視力、明るさの弁別、色彩視の視覚機能は保たれているが、物品または物品の絵などの対象物を明瞭に知覚することが困難になる障害。絵の視覚刺激では呼称・模写・弁別・マッチングおよび口令による選択提示はいずれも不良である。しかし、触覚や聴覚、嗅覚の手掛かりがあれば、物品の呼称は可能である。統覚型視覚失認は脳血管障害によって出現することはまれで、一酸化炭素中毒の症例が多い。一般にびまん性で脳後部に病巣を持つ。

連合型視覚失認

連合型視覚失認では模写が可能で、モデルと同じ物品を複数のサンプルから選択することができる。しかし、その物品名を呼称すること、言葉や動作で説明することは困難である。物品同定の際、連合型では形に関する情報を手掛かりにし、形態を認知する。一般に具体物の認知が最も容易である。病巣は典型的には両側後頭~側頭葉損傷によって生じる

地誌的失見当障害

地誌的失見当は熟知しているはずの建物や風景を見てどこだかわからない、あるいは目印となる建物や風景はわかるがどのように進んだら良いかわからないという症状である。①街並失認、②道順障害、③自己中心的地誌的失見当識障害、④前向性地誌的失見当障害の4つに分類される。病巣は順に①右半球側頭・後頭葉内下面、②脳梁膨大部(特にブロードマン30野)、③両側または右半球後部頭頂葉、④右半球海馬傍回とされている。

相貌失認

発症前には熟知していた顔を見て、誰であるかがわからない症状である。見ている対象が顔であることはわかるが、知っている相手かどうか判断ができない。しかし、声をかけられると即座に相手を認知することが可能である。従来報告されてきた病巣は両側紡錘状回~舌状回とされている。

聴覚失認

広義の聴覚失認はすべての聴覚刺激(環境音、言語音、音楽)の認知が障害された状態をいう。純音聴力は正常に近く、文字言語理解にも障害がみられないが、聴覚提示されたすべての音の認知が不良となる。

狭義の聴覚失認は環境音失認を指す。言語音の認知は保たれているが、非言語性の有意味な聴覚刺激(環境音)の認知が障害された状態をいう。

聴覚失認とは聴力は残存しているものの、言語音、非言語音(環境音、音楽)の音の現す意味がわからない障害である。病巣は大脳の片側あるいは両側の聴皮質とされている。

観念運動失行

観念運動失行は物品を使用しない単純な運動や単一物品を対象とする運動が口頭命令、模倣、物品使用のいずれでも困難な状態を指す。誤反応には無反応、拙劣、遅延、保続や他に目的の動作と異なる動作への置換や意味不明な動作(例:歯ブラシを持った手を無意味に振り回す)などがある。こうした誤りは日常生活の自然状況下では現れない(意図的動作との乖離がある)。リープマンによると責任病巣は左頭頂葉である。

観念失行

観念失行では個々の運動は可能であるが、複数の物品を用いた複数の動作(複雑な一連の系列的動作)を正しい順序で行い目的動作を達成することが困難になる。個々の動作自体に誤りはない。こうした誤りは日常生活の自然状況下でも現れる。リープマンによると責任病巣は左頭頂葉後方である。

肢節運動失行

肢節運動失行は主に手と指による動作(例:ボタンをはめる、ページをめくる)の遂行が不完全、粗雑、途切れ途切れの状態を指し、動作の種類や遂行条件を問わず障害が現れる。運動の取り違えはみられない。日常生活上でも症状が現れ、症状の程度は意図的動作と自動的操作のどちらでも差は見られない。病巣は左右どちらかの半球の中心領域(中心前回、中心後回)で対側上肢に症状が現れる。

着衣失行

着衣失行とは衣服の着脱の障害であって、衣服とその着脱行為に限定する。他の物品動作、あるいは対象が衣服であての着衣以外の行為は保たれている。病巣としては、一般に右半球頭頂葉が重視されている。

口部顔面失行

言語命令または模倣命令に応じて口部顔面の習熟運動が遂行できない。口部顔面失行の最大の特徴は例えば、「咳払いをして下さい」に対して「えへん」とか「ごほん」などという言語化である。これは代償行動と考えられる。病巣としては左半球の損傷で出現するというのが大方の見解である。

発語失行

左中心前回中~下部後壁側の損傷によって、アナルトリー(失構音、発語失行)が出現する。これは、一貫性のない構音の歪みと、音のつながり異常からなる発語の障害である。

純粋語唖

病巣は中心前回下部。構音障害失語症等によらない話す事だけの障害。

頻発症状は音の歪みや置換。

プロソディ障害。

頻発合併症は喚語困難、書字障害、口腔顔面失行、右顔面、右上肢麻痺。

純粋語聾

病巣は両側側頭葉、左側頭葉と脳梁線維

聴力障害、聴覚失認、失語症等によらない聴覚言語理解だけの障害。

頻発症状は読唇、発話速度の低下による理解力の改善。

頻発合併症は喚語困難、失音楽、純音聴力の低下、プロソディ発音の異常。

ゲルストマン症候群

失算・失書・左右失認・手指失認

病巣は左側角回上部・上頭頂小葉下部

半側空間無視

大脳半球病巣の反対側の刺激に反応せずそちらを向こうとしない。右半球損傷によって最も高頻度にみられる。左片麻痺を合併することが多い

​プリズム順応○

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