聴覚検査

新生児聴覚スクリーニング

新生児聴覚スクリーニング検査に用いられる機器は大別して、ABR(聴性脳幹反応)に由来するものとOAE(耳音響放射)に由来するものがある。ABRに由来するものに自動ABR(A-ABR)、OAE(耳音響放射)に由来するものには、歪成分耳音響放射(DPOAE)と誘発耳音響放射(TEOAE)の2種類がある。

自動ABR検査

従来から他覚的聴覚検査として用いられているABRに自動解析法を導入したものである。この解析法は、平均加算した反応電位のうち、決められた9つのサンプリング点の電位についてアルゴリズム解析により統計処理し、反応の有無を自動判定するものである。装置の画面上には、加算波形は表示されない。判定結果に基づいて自動的に「pass(反応あり)」または「refer(要再検)」が表示される。

検査方法は、自然睡眠時に試行可能である。防音室でなくても静かな部屋であればよい。検査対象は、在胎34週以降の新生児から生後6カ月以内の乳児で、外耳及び頭頸部の解剖学的異常をもたない子供である。

 

検査は、3個の電極の皮膚装着、イヤカプラの耳介装置あるいはいやプローブの外耳道挿入により実施する。刺激音は35dBHLのクリック音を用い、設定された基準をクリアーすると「pass」、クリアーしないと「refer」と表示される。

自動ABRでreferと判定された場合、精密検査としてはABRが実施されることが多い

耳音響放射(OAE)

耳(外耳道)から音が出てくる(放射される)という現象で、その生起メカニズムは蝸牛の能動的過程が関与している。この過程は、聴覚閾値付近の弱い刺激をより確実に感知することに役立っており、なかでも外有毛細胞が重要な機能を担っている。

内有毛細胞と比べはるかに多く存在する外有毛細胞は、直接的な感音機能ではなく、内有毛細胞の感音機能をサポートする役割を担っている。つまり、基底板上の進行波の最大振幅位置(到来した音刺激の周波数に対応した部位)付近の外有毛細胞が、伸縮運動を行うことで付近の基底板振動をさらに増幅させ、内有毛細胞がより音を感知しやすいよう機能している。このように、蝸牛が音刺激を受容することによって生ずる外有毛細胞の伸縮運動に伴って発生する音が、外耳道から外界へ放射される現象がOAEである。

自動ABRよりもreferとなることが多い

特徴→「他覚的検査・感音難聴の部位診断・新生児聴覚スクリーニング」

※active processが消失すると聴覚閾値は40~50dB程度上昇すると考えられている

EOAE検査

誘発耳音響放射のこと。クリック音やトーンバーストの音刺激後、一定の潜時(5~15msec)で外耳道から記録される。約30dB以上の難聴になると検出困難となる。

DPOAE検査

歪成分耳音響放射のこと。周波数の異なる2音で同時に刺激すると全く別の周波数の音が外耳道から検出される。通常、刺激音の周波数F1,F2に対して2F1~F2の音が最も振幅が大きいため、検出の対象となる。F1,F2の音圧、周波数比を一定にし、DPOAEを各周波数で測定したものをDPグラムという。

蝸電図

内耳と蝸牛神経由来の反応で音刺激後3msec程度以内に認められる反応である。構成成分として、蝸牛有毛細胞由来の蝸牛マイクロホン電位(CM)、ならびに加重電位(SP),また蝸牛神経由来の神経複合活動電位(CAP)などが臨床応用されている。

 

内耳ならびに第8神経機能の情報が得られる。2kHz以上の高周波数域では周波数特異性を有する。睡眠や麻酔の影響を受けない。さらに非検耳のマスキングを必要としない。しかし、より詳細な情報が得られる鼓室内誘導では鼓膜を穿通して針電極を刺入するため熟練を要する。

 

聴性定常反応検査(ASSR)

ABRなどとは異なり、非常に刺激感覚の短い(刺激頻度の高い)聴覚刺激による誘発反応のことで、各反応波形が他の反応波形と干渉しあうために、正弦波(サイン波)状の波形が得られる。刺激音としてSAM音を用いた聴性定常反応は他覚的検査としての有用性が期待されており、検査装置が市販されている。

聴性脳幹反応検査(ABR)

音刺激により10msec以内に5~7個のピークを持った波形が得られる。この波形は蝸牛神経から脳幹部聴覚伝導路までの電気活動に由来する。聴覚伝導路が刺激され活動すれば、ABR波形が出現するため乳幼児の聴力閾値の推定や詐聴の評価などに用いられる。他に脳幹部の腫瘍や脳血管障害でも重要な臨床的情報を提供する。

ABRでの聴力閾値の推定は、最初の強大音刺激では明瞭な波形を呈するが刺激音圧を小さくしていくと各波形の振幅は小さく、かつ潜時が延長するようになる。各波は消失していき、最後にⅤ波が消失する。波形の確認できる最低音圧をもって反応閾値とする。なお、クリック音刺激では2~4kHzの聴力を反映するため、低音域の聴力の評価ができず、ABRで無反応=聾ではなく、低音域に聴力が残っている場合もあるので注意が必要である。

刺激音→「クリック音・短音(トーンピップ、トーンバースト)」

※クリック音が用いられることが多い

後迷路障害であるAuditory neuropathyではABRは無反応となる(OAEは正常)

Ⅰ波-蝸牛神経

Ⅱ波-蝸牛神経核

Ⅲ波-上オリーブ核

Ⅳ波-外側毛帯

Ⅴ波-下丘

※Ⅴ波の閾値をもってABRにおける他覚的聴覚閾値とする

純音聴力検査における聴覚閾値とABRにおける閾値の差はおよそ10dBである

聴性反射検査

音刺激による原始反射の有無を指標とする検査。その中でも寝入りばなに提示する刺激に対する反応を指標とするものを入眠時開眼反応検査という。

適応年齢は定型発達時の場合、原始反射が抑制される生後3か月以内である。

聴性反射検査に利用できる主な反射は、モロー反射(四肢又は全身でビクッとする反射運動)、目瞼反射(瞬目,閉眼あるいは開眼反射),吸啜反射(口唇を吸うように動かす反射運動),呼吸反射(深呼吸,呼吸のリズム変化)などである。検査用音源は、携帯用オージオメータやタイコ、シンバル、すず等の楽器、入眠時開眼反応検査では舌打ちやビニール音などを使用する。

聴性行動反応聴力検査(BOA)

呈示した音刺激に対する児の反応・行動の観察によって聴覚の状態を評価する検査。乳幼児の発達段階に応じた学習性の反応・行動が出現するか否かが観察のポイントである。この検査で得られる閾値は、反応閾値(出現閾値)であり、最少可聴閾値ではない。保護者に結果を伝える際には注意が必要。

適応年齢は、聴性行動がみられだす生後3ヵ月以降どの年齢でも可能であるが、一般的には1歳頃までが多い。あるいは、発達的問題により他の幼児聴力検査が難しい時に実施する。

検査方法は、被検児の背後から(視覚刺激の除去)音刺激を与え、それに対応した行動の変化を観察する。被検児の相手をしながら行動変化を読み取る者と音提示を担当するもの2名で行う。

①原則として音圧の小さい器具から順に呈示する。

②検査器具が被検児に見えない位置から検査音を数回提示する。

③検査音を、それぞれ左側と右側の両方から与えて行動を観察する。

④被検児が音源を定位した場合は音素材をみせ、しっかり音を聞かせ、反応を強化する。

 

※一般に新規の刺激に対してよりよく反応する。あるいは刺激の変化に敏感である。そのため、同じ音を何回か提示すると最初はっきりと反応が得られたと思われた物でも、反応が見られなくなる。従って、複数の刺激音を変えながらはじめの数回の提示に対して、反応の観察を注意深く行う。

条件詮索反応聴力検査(COR)

CORは、音源を探してそちらの方向を見るという音源定位反応を利用したもので、定位反応が持続的に(反覆して)出現するように視覚刺激による強化を取り入れていることが特徴である。検査音を呈示した際に音源定位反応が出現したら、ライトを点滅させるなど視覚強化刺激を呈示することによって、繰り返し音刺激を呈示しても定位反応が出現し続ける。そうした枠組みの中で、音源定位反応の出現閾値を測定する。

このように、CORは音源定位反応の出現を指標とするので、音源定位が困難な高度難聴児においては実施不可能である。

検査装置は左右一対のスピーカを備えており、その各スピーカの上には視覚強化刺激呈示用のライトなどが設置されている。

視覚強化聴力検査(VRA)

CORを基に考案された乳幼児聴覚検査法で、高度難聴例など音源定位反応が困難な症例へも適応可能という特徴がある。臨床検査として非常に有効で、「COR」という名の下に実際には「VRA」の手続きを施行することが多い。ピープショウ検査とともに、オペラント条件づけによって検査手続きを説明することができるので、各刺激の呈示のタイミング、持続時間の設定などには学習理論を応用できる。

CORでは、音源定位反応が持続して(反覆して)生起するように、反応が生起するたびに視覚強化刺激(ライトの点滅など)を呈示することがポイントであったが、VRAでは、検査音(信号刺激)に視覚強化刺激(ライトの点滅など)を随伴させ、検査音に対して視覚刺激方向への振り向き反応を形成することがポイントである。

※CORとVRAの違い

・スピーカの個数:左右2つ(COR)、正面1つ(VRA)

・条件付けの手順:音源定位行動の強化(COR)、オペラント条件の形成(VRA)

遊戯聴力検査(play audiometry)

ピープショウ検査は、単純なボタン押し反応によって視覚強化刺激(報酬)を提示できるため、認知・運動発達レベルが高い被検児の場合、同じピープショウ・ボックスを繰り返し用いているとそれに飽きてしまい、興味を示さなくなることがある。

そこで、概ね36カ月以降の認知・運動発達レベルに達している被検児には、種々の玩具・教具を用いることによって飽きることを回避できる本法が適している。

※条件付けすることが必要

標準純音聴力検査

個人の最小可聴値(聴力レベル、聴力閾値)の測定を目的とした検査で、刺激音の伝導経路の違いによって「気道聴力検査」と「骨導聴力検査」に分けられる。気道聴力検査と骨導聴力検査はほぼ一対の検査と考え、両者の結果を統合して検討しなければ評価・診断は不完全なものとなる。聴力レベルの“ゼロdBの線”は多数の聴力正常耳の平均的な最小可聴値を示し、“正常耳”という基準になる。したがってマイナス表示は、平均的な正常耳よりもさらに弱い音が聞こえることを意味する。

気導→125Hz~8000Hz

骨導→25oHz~4000Hz

上昇法(5dBステップ)

断続音

※骨導検査は骨迷路を振動させて内耳を刺激する

マスキングノイズ

狭帯域雑音(バンドノイズ):純音聴力検査

白色雑音(ホワイトノイズ):語音聴力検査

加重雑音(ウエイトノイズ):語音聴力検査

スピーチノイズ:語音聴力検査

マルチトーカーノイズ:語音聴力検査

インピーダンスオージオメトリ

聴覚検査の一種。インピーダンスオージオメータを用いたティンパノメトリおよびアブミ骨筋反射検査という2種類の検査をいう。

ティンパノメトリ

鼓膜コンプライアンスの測定値から鼓膜の可動性を評価する検査。外耳道内の気圧を加圧・減圧しながらコンプライアンスを測定するので、中耳腔内圧の状態(陰圧化の有無や程度)も評価することができる。

ティンパノグラムA型とB型の違い

A型はコンプライアンスのピークが±100daPaの範囲にあるもので、正常耳および感音難聴耳にみられるパターンであり、中耳伝音機能は正常であることを示す。一方B型は、コンプライアンスのピークが認められない平坦なパターンで、中耳伝音機能が極端に低下していることを表し、滲出性中耳炎や癒着性中耳炎などによる比較的重度の伝音難聴や混合難聴の場合にみられる。

ティンパノグラムAs型とAd型の違い

A型であっても通常よりスタティックコンプライアンスが小さい(山が低い)ものをAs型といい、耳硬化症などのため鼓膜の可動性が低下している場合にみられる。一方、スタティックコンプライアンスが大きい(山が高い)ものをAd型といい、耳小骨連鎖離断などのため鼓膜の可動性が極端に増大している場合にみられる。

アブミ骨筋反射検査

アブミ骨筋反射検査は、強大音に対して耳小骨筋反射が生起すると鼓膜コンプライアンスも変動することを利用したもので、主として聴覚路上の障害部位を推定するための検査である。

伝音難聴では陰性となる

語音了解閾値検査

語音(一桁数字)でどの程度小さな音を聴き取ることができるか、最小可聴閾値を測定する検査である。語音了解閾値は平均聴力レベルにほぼ一致する。本検査は①純音聴力検査の結果が疑わしい場合の聴力閾値確認、②機能性(心因性)難聴や後迷路性難聴の鑑別診断などに用いられる。機能性難聴の場合、純音聴力より語音聴力の方がよくなり、後迷路性難聴では語音聴力が大幅に低下する。

語音弁別検査

単音節で構成された語音リストを十分に聞こえるレベルで提示したとき、どの程度正確に聴き分けられるかを測定するもので閾値上検査の一つである。本検査は①実生活におけることばの聴き取り、コミュニケーション能力の測定、②補聴器適合判定時の装用の可能性や装用耳の選択、③補聴効果の判定、④後迷路性難聴の鑑別診断、⑤人工内耳埋め込み後の訓練効果の評価、⑥身体障害者手帳の等級認定などに用いられる。

スピーチオージオグラムに記載する

語音聴取閾値-破線

語音弁別検査-実線

自記オージオメトリ

(ベケシー検査)本検査は生物物理学者のベケシーが原法を考案した。自記オージオメトリは検査音の強さや周波数を自動的に変化させ、通常のオージオメータに接続された自動装置で記録することができる。検査音は持続音、断続音の2種類を使い、それぞれ鋸歯状の波形が記録される。

自記オージオメトリ等の検査は主として補充現象の有無や程度を調べることによって、感音難聴の迷路性、後迷路性の鑑別や聴覚の質(聴こえ方)の評価に用いられるもので、内耳機能検査と総称される。

Jergerの5分類

Jergerは自記オージオメトリで得られた持続音、断続音での波形をひかくすることにより難聴を5型に分類した。

・Ⅰ型:持続音と断続音とで結果が重なり合う。正常耳や伝音難聴にみられる。

・Ⅱ型:中~高音域で持続音が断続音よりも5~20dBほど閾値上昇する。内耳性難聴にみられる。

・Ⅲ型:持続音では徐々に閾値上昇をきたす(一過性閾値上昇)。後迷路性難聴にみられる。

・Ⅳ型:Ⅲ型に類似するが持続音での閾値上昇が低音域でもみられる。後迷路性難聴にみられる。

・Ⅴ型:断続音が持続音よりも悪化。機能性難聴(詐聴や心因性難聴)でみられる。

SISI検査

後述のABLB検査とは異なり一側耳のみで測定可能。持続音のわずかな強度変化を検知できるか否かによって、補充現象の有無を判断するための検査。一般に内耳障害による感音難聴では補充現象陽性である。

閾値上20dBの純音を聴かせ、短時間(5秒毎に1回300ミリ秒)に1dBだけ強い音を聴かせたときその変化を何回聴き取れるかを%で示す。補充現象により蝸牛障害では音の強さの変化をより鋭敏に聴き取れる。70%以上を陽性とする。

 

ABLB検査・バランス検査

片側感音難聴(他側耳は正常)例に対する補充現象の検査である。正常耳と難聴耳とで同じ大きさ(ラウドネス)に感じる音の強度を求め、正常耳における刺激強度とラウドネスとの関係を基準として、難聴耳における刺激強度とラウドネスの関係を比較する。

 

MCL検査

MCL(most comfortable loudness level, 快適レベル)=やかましすぎず、小さすぎもせず、快適に聴いていられる大きさに対応した音の強度のこと。被験者の閾値レベルから検査音呈示を開始し、5dBステップで刺激強度を上昇させる。MCLに達したと判断したらあらかじめ決めてあった合図をしてもらう。後述のUCL検査と共に、聴覚のダイナミックレンジを把握し、それを補聴器フィッティングなどに応用するための検査と位置づけられる。

UCL検査

UCL(uncomfortable loudness level, 不快レベル)=やかましすぎるために、不快で聴いていられない大きさに対応した音の強度のこと。前述のMCL検査の手順の後、さらに刺激強度を上昇させていき、被験者にはUCL(不快レベル)に達したと判断したら合図をしてもらう。述のUCL検査と共に、聴覚のダイナミックレンジを把握し、それを補聴器フィッティングなどに応用するための検査と位置づけられる。

IT-MAIS

聴性行動観察による聴覚言語理解の評価チェックリスト

人工内耳の適用判断にも利用される

語表・S語表

57語表-1桁数字リスト6行6列-単音節リスト5行10列

67語表-1桁数字リスト7行6列-単音節リスト2行10列

57-S語表-1桁数字リスト6行6列-単音節リスト5行10列

67-S語表-1桁数字リスト6行6列-単音節リスト2行10列

補充現象検査

バランステスト

DL検査

SISI検査

MCL検査

読話

話し手の口周辺の動きを観察し文法的、文脈的手がかりを用いて話されている内容を理解していく方法

話し手側の表情や構音運動の速さ、明瞭さ、身振り、声の大きさも重要な要因である

キューサイン

キュードスピーチにおいて用いられるもので日本語の子音部分を表す手の形を示す

リング6音

/a/→中回転

/i/→基底回転~中回転

/u/→基底回転~中回転

/s/

/ʃ/→基底回転

/m/→中回転~頂回転

※「基底:高い」「頂:低い」

聴覚障害者の支援機器

FM波送受信機

赤外線送受信機

磁気ループシステム

振動式呼び出し装置

平均聴力レベル

(500Hz)+(1000Hz)×2+(2000Hz)÷4

「○右耳」「✕左耳」

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