​臨床神経-キーワード

神経軸索(軸索)

神経軸索は、ニューロンの一部であり、その働きは、情報を細胞体から神経終末へ伝えることである。

グリア細胞(神経膠細胞)

グリア細胞は、ニューロンが正常に作用するように、物理的・代謝的な側面から支持・保護している。以下に、中枢神経系におけるグリア細胞の具体的な働きをまとめる。

①アストロサイト=物理的にニューロンを支える。神経伝達物質の回収・調節。(星状膠細胞)

②オリゴデンドロサイト=軸索に巻き付き、髄鞘を形成する。(希突起膠細胞)

③ミクログリア=貪食作用を持ち、変性したニューロンやその死骸を取り込む。(小膠細胞)

イオンチャンネル(イオンチャネル)

イオン浸透圧の低い細胞膜において、イオンが拡散するための出入り口となる。

Na+(ナトリウム)チャネルやK+(カリウム)チャネルなどがある。

 

ニューロンの静止膜電位

ニューロンはイオンポンプによるイオンの能動輸送などによって、膜内外の相対的な電位差を維持している。これを、静止膜電位と呼ぶ。

活動電位

電気的な刺激によってチャネルが開口すると、イオンの流入により細胞内外の電位が逆転する。これが活動電位。要は、筋が脳からの指令で興奮(緊張)する際に生じる電気。

 

シナプス

ニューロン同士の接合部のことをシナプスと呼ぶ。シナプスでは、神経伝達物質を介した科学的な情報伝達が行われている。また、シナプスは電気的シナプスと化学的シナプスに分類される。電気的シナプスは中枢神経と末梢神経の間に存在し隣り合うニューロンが神経伝達物質を介さずに直接的に情報のやりとりをしている。化学的シナプスは、隣り合うニューロン間に神経伝達物質が行き来して情報をやりとりしている。各ニューロン間を列車だとすれば、シナプスは列車と列車の接合部の金具に相当する。

 

シナプス伝達

ニューロン間の情報伝達は、シナプスを介して行われる。ニューロンを伝わってきた電気的な情報は、シナプスにおいて神経伝達物質による科学的な信号へと変換され、次のニューロンへと伝達される。

 

興奮性シナプス

前のシナプスから送られてきた神経伝達物質を介した情報は、次のシナプスで受け取られる際に、脱分極を促すものが興奮性シナプスである。

 

*脱分極=ニューロンの活動電位を生み出すこと。

抑制性シナプス

興奮性シナプスとは反対に、脱分極を抑制し活動電位の発生を抑制するものが、抑制性シナプスである。

 

*興奮性シナプスと抑制性シナプス=1つのニューロンには無数のシナプスが存在し、膨大な数の信号が神経伝達物質を介して送られている。そのため、1つ1つの信号は小さく、単独で反応を起こすことは出来ない。興奮性か抑制性信号のどちらかが多く届いたときに、はじめて反応が生じる。つまり、興奮性または抑制性信号のより多く入力(届いた)され、閾値に達したものが出力される。

 

シナプス伝達物質

神経伝達物質は主に4つである。①モノアミン系・②アミノ酸系・③アセチルコリン・④神経ペプチドがあげられる。以下は、各神経伝達物質の詳細である。

①モノアミン系=ドパミン(ドーパミン)・アドレナリン・ノルアドレナリン・セロトニン

*アドレナリン・ノルアドレナリンはエピネフリン・ノルエピネフリンと表示される場合もある。

②アミノ酸系=グルタミン酸・GABA・グリシン

③アセチルコリン

④神経ペプチド

シナプス電位の統合:時間的加重

求心神経に一定の時間間隔で反復刺激を与えると、受け取り先のシナプス後電位が加算されて大きくなるという現象を時間的加重という。つまり、時間的・空間的加重とは電位が上昇することにより筋の興奮が促進されることである。

 

*シナプス後電位=シナプスを介した信号伝達の結果、シナプス後細胞(受け取り先のシナプス)に発生する電位

 

シナプス電位の統合:空間的加重

1つのニューロンに収束する複数の求心神経を刺激すると、それぞれの求心神経の刺激によってシナプス後電位が加算される現象。

 

神経回路における発散

発散とは、1個のニューロンから数個のニューロンへ情報が伝播することをいう。この発散によって、情報が広範囲(多くのニューロン)に拡散することが可能となる。また、感覚性のニューロンが中枢神経(脳・脊髄)に情報を伝える場合、非常に多くの発散が起こる。

 

小脳の機能

小脳は四肢・体幹の動きや調節、平衡・眼球運動の調整に関わり、入力された情報をもとに錐体路などを調整して、なめらかで適切な運動を可能としている。また、経験を積むことで体が覚えていくスポーツや特殊技能などの運動の学習は、小脳の働きによるとされている。以下に主な動きをまとめる。

 

①眼球と頸部の運動、体幹の調整

②全身の動きや姿勢の維持をサポート

③運動のプログラム化に関与

④体で覚えたもの(例:スポーツ・特殊技能)の記憶(学習)

 

小脳障害

小脳障害は、大まかなイメージとして、酔っ払いの人を思い浮かべると良い。例えば、言葉がとぎれとぎれでハッキリしない・揺れながら不安定に歩く等である。具体的には、小脳障害では、小脳失調(小脳性運動失調)という特徴的な症状が生じる。小脳失調は以下のものがある。

 

①歩行障害=酩酊様歩行

②立位・座位での体幹の動揺=体幹失調

③小脳性構音障害(失調性ディサースリア)

断綴性言語:とぎれとぎれな話し方

緩徐言語:ゆっくりとした話し方

爆発的発生・爆発性言語:突然大声に!

 

④測定障害=手足を目標物に正しくもって行けず、外れてしまうこと。

例:カバンを取ろうとするが、手がカバンを超えてしまう。

⑤運動の分解ができない=複数の筋が協調してスムーズに動く事ができず、バラバラになってしまう。

例:指鼻指試験ができなく、ブルブルと震える。

⑥変換運動障害=ある動きから、別のある動きへの変換がスムーズにできない。

例:キーボードを打つ・ピアノを叩くといった指の細かい切り替え運動ができない。

⑦企図振戦=手や足を目標物に近づけようとした時に生じる、不規則で速いふるえ。

例:針に糸を通そうとすると手がふるえる。

⑧注視方向性眼振=視線をある方向に固定した場合に生じる眼振。

⑨平衡障害・眩暈(めまい)

 

ロンベルグ試験

ロンベルグ試験は、深部感覚を調べるものである。開眼した状態で、真っ直ぐに立つことができなければ(揺れてしまう・崩れてしまう)、小脳障害を疑う。次に、開眼した状態は安定していて、閉眼した場合にのみ揺れや崩れが見られる場合は、脊髄後索障害や末

梢神経障害を疑う。

錐体路の機能

錐体路は主に、外側皮質脊髄路(上位運動ニューロン)を指し、頸部から下の運動(主に、四肢の運動)を行う脳からの指令が通っていて、末梢神経(下位運動ニューロン)の筋緊張(筋の運動)を抑制(調整)している。要は、四肢の随意運動をつかさどる神経経路で、上位運動ニューロンであり、中枢神経に分類される。また、障害されると錐体路症状を呈する。

 

*錐体路症状=随意運動の障害・痙性麻痺・筋トーヌス(筋緊張)の亢進・腱反射の亢進・病的反射(バビンスキー反射など)の出現

錐体路の経路

大脳皮質(大脳レベル)→内包後脚(大脳レベル)→大脳脚(中脳レベル)→橋→錐体(延髄レベル)→錐体交叉(延髄レベル)→頚椎(脊髄レベル)・腰椎(脊髄レベル)

錐体外路の機能

錐体外路とは、解剖学的に特定の部位を指すのではなく、錐体路での筋の随意運動を円滑に遂行するために、付随的に筋の緊張を調整(抑制)している神経経路の総称である。混乱しがちだが、錐体路と走行はほとんど同じであり、違いは延髄に存在する錐体を通過するかしないかである。つまり、錐体外路とは、中枢神経で上位運動ニューロンに分類される。

 

錐体外路は大脳基底核を通過するため、その障害である「錐体外路症状」とは、ほぼ大脳基底核とそれに関連した神経の障害による症状を示している。その機能は、小脳などと共に、錐体路による運動の命令を調整し、体のスムーズな運動を可能にしている。錐体外路系には、前庭脊髄路・視蓋脊髄路・赤核脊髄路・網様体脊髄路がある。

 

また、錐体外路症状とよばれるものがあり、その特徴は以下である。

 

*錐体外路症状(大脳基底核の障害による症状)

 ①パーキンソン症状=無動・安静時振戦・筋固縮(筋剛直)・姿勢反射障害

 ②その他=多動(ハンチントン舞踏病)・バリズム

 

錐体外路の経路

錐体外路とは、延髄を通過しない中枢神経系の経路全てが錐体外路となる。そのため、解剖学的に明確な走行(経路)や部位などを特定することは難しい。だが、錐体外路の中で、特に重要視されているのが大脳基底核である。

 

*大脳基底核の構成=線条体(尾状核・被殻)・視床下部・淡蒼球・レンズ核(被殻・淡蒼球)・黒質(これは、中脳にある)

 

脳動脈の穿通枝

穿通枝とは、大脳動脈輪(ウィリスの大動脈輪)と主要な大脳動脈と近位部から、いきなり脳の実質内に入り込み、そのまま分枝せずに脳の深部の組織に血液を供給する。

 

脳梗塞の種類

脳梗塞は3種類に分類される。詳細は以下である

①ラクナ梗塞

日本人に最も多く、脳梗塞の半数近くを占める。脳の微細な血管が高血圧のため、損傷を受けて詰まり、脳の深部に細かな(小さな)梗塞巣が生じる。

 

症状は比較的軽度の場合が多いが、繰り返し発症する場合は、脳血管性痴呆(脳血管性認知症)やパーキンソン症候群を呈することがある。

 

②アテローム血栓性梗塞

アテローム血栓性梗塞とは、動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなった太い脳血管に血栓ができ、梗塞が生じる。日本人の脳梗塞の約20パーセントを占めている。動脈硬化を発症・進展させる高血圧・高脂血症(脂質異常症)・糖尿病・喫煙などの成人病(生活習慣病)が危険因子である。

  

症状は、片麻痺や感覚障害、失語や失認などの「高次能機能障害」も伴う場合もある。さらに、合併症として心筋梗塞・四肢の閉塞性動脈硬化症がみられる。

 

③心原性脳梗塞

心原性脳梗塞とは、心臓に出来た血栓が剥がれ、血流に乗って脳に到達し、脳動脈を塞ぐ(梗塞)するものである。主な原因は、心房細動・リウマチ性弁膜症(心臓症)・心筋梗塞・心筋症・人工弁などの心臓疾患である。

  

症状は、様々である。だが、それまで正常に循環していた血管が突然に詰まるため、バイパス手術など外科的な処置をする時間的な猶予がない場合が多く、脳梗塞は広範囲に広がり、症状も重傷化する傾向にある。

 

脳血栓

脳動脈の動脈硬化が進行し、脳動脈の内腔が狭窄する。その結果、血液がよどみ、徐々に血栓が形成され、最終的に脳の動脈を詰まらせてしまう。危険因子は、高血圧・喫煙・高脂血症(脂質異常症)・糖尿病などの生活習慣病である。

 

脳梗塞

心臓や頸部で形成された血栓が血液の循環と共に、脳動脈に流れ込む。その結果、脳動脈を血栓で塞いでしまうのが脳梗塞である。

危険因子は、心房細動・不整脈・心臓弁膜症・心筋梗塞などの心臓疾患である。

 

多発性硬化症

中枢神経系脱髄疾患の中で最も多いものである。主として若年成人をおかす疾患であり、大脳、小脳、脳幹、脊髄、視神経などの中枢神経組織に多巣性の脱髄病変が生じる。そして、これらの病変に基づく多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す。特異的な初発症状はないが、視力障害が比較的多く、球後視神経炎の20~50%は多発性硬化症に発展する。病変は脳室周囲に接して後発し側脳室周囲の病変は数多く見られることはある。

 

ギランバレー症候群

炎症性ニューロパチーの代表疾患である。何らかの先行感染によって活性化された自己免疫機構が抹消性髄鞘を障害し、多発性の脱髄病巣をつくる疾患である。感冒や胃腸炎から1~3週間後に急に筋力低下と感覚障害が発症し蛋白細胞の解離が特徴的である。

 

パーキンソン症候群

パーキンソン病を含めてパーキンソン症状を示す病態をいう。ドパミン作動性黒室線条体神経線維の機能低下が原因で起こる。進行性の疾患で治療はレボドバ・ドパミン作動薬を投与すると症状の改善が見られる。発症後10年程度は独立した日常生活が可能である。それ以後は介助が必要となり15~20年くらいで臥床生活となることが多い。

 

三大症状

静止時振戦・固縮・無動

 

他の症状

姿勢反射を加えたものを四大症状という。その他には寡動・歩行障害・仮面様顔貌など。

筋委縮性側索硬化症(ALS)

運動ニューロン疾患の一つ。有病率は2~5/10万人である。ALSの90~95%は孤発性で残りは遺伝性である。発病率のピークは50~60代で男女比は2:1で男性が多い。ALSは発症して3~4年で呼吸筋麻痺に陥る疾患であるが人工呼吸器を使用しながら在宅療養へ移行する場合もある。リルゾールで治療するが努力性肺活量が60%以下の患者では効果が期待できないので投与しない。

皮膚感覚の種類

触覚・圧覚・振動覚・温度感覚・痛覚などそれぞれ伝える感覚の種が決まっている。

 

体性感覚路

全身には感覚を感知する各種の感覚受容器が分布している。受容器が完治した情報は感覚神経線維(一時ニューロン)へと集まり脊髄に至る。感覚情報は脊髄を上行していき視床を経由して大脳皮質の体性感覚野に伝わる。脊髄を上行する途中、毛色は左右に交叉するため右半身の情報は左半球の大脳皮質へ、左半身の情報は右半球の大脳皮質へと伝わる。したがって疾患や外傷で脳が傷害されると反対側の身体に感覚異常が現れる。

 

上位運動ニューロン障害(中枢性)

大脳皮質~白質の障害である。上位運動ニューロンの障害部位は交叉前なので運動麻痺は病巣側と対側に現れる。

麻痺の強さ:初期は完全麻痺でも次第に回復し不全麻痺に終わる傾向がある。

麻痺の部位:対側の上下肢及び顔面が麻痺する。

筋緊張:初期に弛緩、徐々に痙性が強くなる。

反射:深部反射は亢進し表在反射は消失する。また、病的反射が現れる。

筋委縮:見られないが廃用性の委縮は起こる。

 

大脳皮質運動皮質に限局して痙攣が起こる焦点性(ジャクソン型)痙攣や失語症、身体失認が特徴的である。

 

下位運動ニューロン障害(末梢性)

核~筋の神経路の障害である。下位運動ニューロン運動は交叉後なので麻痺は病側に現れる。

麻痺の強さ:完全麻痺となり回復することは難しい。

麻痺の部位:病側の上下肢が単独で麻痺を起す。

筋肉の緊張:直ちに弛緩し、検者が力を加えても抵抗がない。

反射:反射の回路が障害されるため一切の反射が消失ないし減弱する。病的反射はない。

筋委縮:早期から筋肉の委縮が生じ3カ月以内に筋肉容積の70~80%が減少する。

大脳基底核

大脳半球の中央部にある灰白質の核群「尾状核・被殻・淡蒼球」の総称である。また、錐体外路としての働きに関係しておりこの他「扁桃体・前障・視床下核・黒質・赤核」を合わせて大脳基底核とていぎすることもある。「尾状核と被殻」を合わせて線条体、「被殻・淡蒼球」を合わせてレンズ核とよぶ。働きは姿勢の保持や筋肉の緊張の調節、大まかな運動の調節など運動機能との関係が深い。

Papez回路

情動の回路として考えられている。「海馬→脳弓→乳頭体→視床前核→帯状回→海馬」と神経線維の結合によるサーキットを構成している。

Yakovlev回路

ヤコブレブが情動に関連した構造として以下の閉鎖回路を追加した。(扁桃体→視床背内側核→前頭葉眼窩皮質→鈎状束→側頭葉前部皮質→扁桃体)

痴呆とは

痴呆(dementia)とは一般に「後天的な脳器質障害により生じた慢性的な知的機能障害」と定義される。痴呆の代表的な診断基準では、痴呆に伴う知的機能障害についてかなり明示され、その中で記憶障害は最も重視されている。しかし、記憶障害の存在だけで痴呆があるとはいえない。例えば、コルサコフ(Korsakov)症候群の典型例では知的機能の低下はしばしばみられないし、記銘力は加齢に伴い一定の範囲で障害されうる。健忘以外の症状で始まる痴呆疾患も存在する。記憶障害だけでなく、注意力障害や視覚認知など種々の認知機能の障害、行為や行動の障害、さらにそれらの障害に対する患者自身の認識についてなど、幅広く症状を把握することが痴呆の理解には必要である。

アルツハイマー病

以前は初老期(65歳未満)に発症した場合をアルツハイマー病、老年期(65歳以上)に発症した場合をアルツハイマー型老年痴呆と呼んだが、両者は病因論的に同一の疾患と考えられるので、現在ではアルツハイマー病と総称される。DSM-Ⅳ分類によるアルツハイマー病の定義は、記憶障害を主軸として、そのほかに失語、失行、失認、遂行(実行)機能の障害が1つ以上みられ、社会的または職業的機能が著しく障害され、これらの症状が緩徐に進行し、かつ脳血管障害をはじめとする記憶や認知機能の障害を引き起こす他の疾患がみられない原因不明の疾患と要約される。

血管性痴呆 

大脳皮質下、あるいは皮質・皮質下にまたがって広範あるいは多発性の病変を生じた場合、さらに認知機能に重要な部位に限局性の病変が生じた場合などに、認知症状態を呈する病像である。血管性認知症の概念は単一の疾患概念ではなく、むしろ包括的集合概念であるため、その臨床像は多岐にわたる。血管性認知症の中で多発梗塞性認知症ないしビンスワンガー型脳症(ビンスワンガー病)の典型的な臨床像では、感情失禁やうつ状態などの精神症状や、痙攣・片麻痺・尿失禁・深部反射亢進・病的反射・仮(偽)性球麻痺などの神経症状・徴候を伴っていることが多い。ある機能はおかされているが、他の機能は保たれている。いわゆる「まだら認知症」の状態を示す。

血管性痴呆の診断

DSM-Ⅳ、ハチンスキーの虚血スコアなどの診断基準がある。

 

アルツハイマー病とは以下の点で異なる。

①臨床症状は段階状に悪化する。

②認知機能に動揺性がみられる(脳梗塞を再発するたびに悪化)

③脳梗塞による痴呆は、まだら痴呆(記憶障害・意欲の低下は目立つが、判断力・抽象的思考力などは比較的保たれるといった不均等な認知障害)を特徴とする。

④初期から歩行障害(小歩症やパーキンソニズム)、排尿障害、偽性球麻痺(構音障害や嚥下障害など)、感情失禁(強迫笑い・泣き)や抑うつなどがみられる。

⑤高血圧、糖尿病、脳卒中の既往、動脈硬化症の所見などがみられることが多い。

血管性痴呆の病理

脳血管性痴呆はアルツハイマー病と並んで痴呆の原因として最も頻度が高く、脳血管病変(脳梗塞や脳出血)、心停止による脳虚血や無酸素状態から生ずる痴呆である。

  

脳血管性痴呆には以下の病型がある。

①灰白質と白質を含む多発性の大きな脳梗塞による痴呆

②脳の一部であるが、脳の機能に重要な作用をなしていると考えられている部位の病変によって起こる痴呆

③脳の小血管病変によって起こる皮質あるいは皮質下性(基底核や視床などの皮質下に存在する部位)の痴呆

   

特に多数の小梗塞が大脳半球の白質に存在し、白質のびまん性の脱髄病変(髄鞘の崩壊)を伴った場合はビンスワンガ(Binswanger)病と呼ばれる(痴呆は大脳半球の白質の病変によるものであり、皮質病変による痴呆とは異なる)。

④心停止、重篤な低血圧あるいは分水界領域の限局性虚血によって二次的に起こった全般性脳虚血によるもの

⑤慢性硬膜下血腫、くも膜下出血の後遺症などによる出血性痴呆

⑥上記病変の混在や他の未知の要因によるもの

レヴィ小体型痴呆(Dementia with Lewy bodies)

変性性痴呆において、レヴィ小体型痴呆はアルツハイマー型痴呆に次いで多いとされる痴呆である。これは多数のレヴィ小体により特徴づけられる痴呆疾患の総称であり、その中心をなすのがびまん性レヴィ小体病である。びまん性レヴィ小体病の主症状は、痴呆およびパーキンソニズムであり、注意や明晰さの著明な変化を伴う認知機能の変動、構築され具体的な内容の繰り返される幻視体験、抗精神病薬への過敏性などの特徴がみられる。

DLBDの病理

レヴィ小体が大脳皮質および皮質下の神経細胞内にびまん性にみられる。

ピック病

ピック病の主病変は前頭葉と側頭葉にあり、その特徴は発動性の低下あるいは欲動的制止の欠如と表現される意欲と情動の障害である。その一方、記憶障害は目立たず、視覚認知、構成能力、計算力など要素的な認知能力は保たれやすい。病識は発病初期から失われることが多い。

ハンチントン病

常染色体優性遺伝性疾患である。成人期に発症し、進行性の舞踏運動をはじめとする不随意運動と性格変化、痴呆を伴う疾患である。パーキンソン病様の症状を示す固縮型や20歳以下に発症する若年型も少数にみられる。

プリオン病

以前は遅発性ウイルス感染症と考えられていたが、現在はプリオン(核酸を持たない蛋白)により伝播することが証明されている。神経細胞膜糖蛋白であるプリオン蛋白の、不溶性で蛋白分解酵素抵抗性である構造異性体の脳内蓄積が原因と考えられている。

クロイツフェルトヤコブ病

中年以降に発症する。急激に進行する認知症、四肢振戦、硬直、ミオクローヌス、意識障害を認め死に至る。病理所見では神経細胞の脱落とアストログリアの増生を認め、その形態から海綿状脳症と診断される。脳波では周期性同期放電を示し、画像診断では急速に進行する脳萎縮が確認される。

シャイ・ドレーガー症候群 - Shy-Drager症候群(SDS)

自律神経症状(起立性低血圧、食事性低血圧、排尿障害、便秘、発汗障害など)を初発症状とし、進行するにつれ小脳症状、パーキンソニズムなども出現する。現在は多系統萎縮症(MSA)に包括されている。

自己免疫疾患

ヒトは本来自己の抗原には免疫寛容性をもつので抗体をつくらないが、その抑制機構が破錠して自己の抗原に対する抗体をつくって発病してしまう状態を自己免疫疾患という。

多発性硬化症

多発性硬化症(MS)は、中枢神経系脱髄疾患の中で最も多いものである。主として若年成人をおかす疾患であり、大脳、小脳、脳幹、脊髄、視神経などの中枢神経組織に多巣性の脱髄病変が生じる。そして、これらの病変に基づく多彩な神経症状が再発と寛解を繰り返す。すなわち時間的・空間的に多発性の経過を示すことを特徴とする疾患である。

脳震盪

 頭部外傷直後に一過性に神経障害(意識消失、健忘、めまい・ふらつきなど)を呈するが、CTでは異常を認めないものをいう。病態として、びまん性軸索損傷の軽症例という説や、脳幹機能障害によるという説がある。

脳動静脈奇形

Arteriovenous maiformation(AVM)。脳の動脈と静脈が毛細血管を介さずに直接つながり(A-Vシャント)、拡張・蛇行した異常な血管の塊(nidus:ナイダス)がみられる先天性の脳血管異常である。小児~若年成人(20~40歳代に多い)に好発し、頭痛、けいれん発作や進行する片麻痺(盗血現象)がみられる。放置すれば破錠して脳出血をひき起こしたり、二次性にくも膜下出血をきたしたりする。

脳動脈瘤

脳の動脈(特に分岐部)にできる血管のふくらみ、脳動脈の中膜が先天的に欠損しているところに、高血圧や動脈硬化などの後天的な要因が加わって、形成されると考えられている。40~60歳に好発し、無症候性のことが多いが大きな動脈瘤になると神経圧迫による症状(散瞳、複視、眼瞼下垂、視野障害など)を呈することもある(症候性)。脳動脈瘤の破錠はくも膜下出血の原因として最多である。

ウイルス性髄膜炎

髄膜炎の所見を呈しているにもかかわらず、髄液の菌培養で何も検出されないものを無菌性髄膜炎という。主に小児に好発する。大半がウイルス性であるが、その他の病原体や膠原病、薬剤、造血剤によって起こるものもある。症状は細菌性より軽く、一般に予後は良好である。主な原因ウイルスにエンテロウイルス属、ムンプスウイルス、単純ヘルペスウイルスがあり、ウイルスによってそれぞれ特有の随伴症状がある。

急性硬膜下血腫

外傷により、硬膜とくも膜との間に生じた血腫である。高度の脳挫傷を伴うことが多い。出血源は架橋静脈あるいは脳挫傷に伴う脳表血管である。側頭・前頭・頭頂部が好発部位である。

慢性硬膜下血腫

通常、軽微な頭部外傷後、数か月(1~3か月)して発生する硬膜下血液貯留液が発生したものである。血腫は被膜を有し、非凝固性である。50~70歳の男性に多い。

頭蓋内圧亢進症状

急性と慢性では症状が異なる。急性の場合、自覚症状として激しい頭痛、悪心・嘔吐、他覚的症状としてCushing現象(徐脈、血圧上昇)、意識障害、網膜出血、散瞳、けいれんがある。慢性の場合、自覚症状として頭痛(睡眠開けに多い)、悪心・嘔吐、視力障害、めまい、他覚的症状としてうっ血乳頭、外転神経麻痺、記憶障害、人格変化がある。重篤な場合、脳ヘルニアがみられる。

正常圧水頭症

歩行障害、痴呆、尿失禁を3主徴とする。CTでは脳室拡大と脳室周囲の低吸収域を示す。RI cisternographyでRIが脳室内に逆流し、24時間以上停滞するもの、あるいは48時間後でも傍矢状部にRIの集積がみられないもの。治療として、脳室腹腔短絡術あるいは脳室心耳短絡術を行う。

グリオーマ 

神経膠腫。グリア細胞から発生し、原発性脳腫瘍の約30%を占める。大脳半球の局所症状と頭蓋内圧亢進症状が生じるが、腫瘍の増大速度の差により各腫瘍型で初発症状が異なる。脳表近くで比較的ゆっくり発育する悪性度の低い星細胞腫(astrocytoma)は成人(25~49歳に好発)の大脳半球、特に前頭葉、次いで側頭葉、頭頂葉に多く、徐々に局所症状が拡大する。一方、脳白質に急速に脳浮腫を伴って浸潤性に増大する悪性度の非常に高い神経膠芽腫(glioblastoma)は45~64歳に好発し、頭蓋内圧亢進症状としての頭痛が最も多い。

ウェルニッケ脳症

ビタミンB₁欠乏が原因であるが、慢性アルコール中毒(ビタミンB₁の吸収が起こる)、栄養障害、不適切な輸液などに合併する。病理学的には乳頭体、視床の背内側核、第三、四脳室および中脳水道周辺に病変がみられる。急性期には意識障害(せん妄)、運動失調、眼球運動障害、末梢神経障害が起こる。慢性期には健忘、失見当識、作話などのコルサコフ(Korsakoff)症候群を示し、重症例や経過の長い例は痴呆に近い症状を呈する。

びまん性脳損傷

Diffuse brain injury:DBI。通常の局所性損傷とは異なり、回転加速度を生ずるような衝撃による損傷で、脳幹部を含めた脳梁部まで及ぶ損傷を生ずる。典型的なCT所見は、白質、脳室上衣下や脳室内、基底核部、脳梁および脳幹に出血を認める。

オリーブ橋小脳萎縮症

OPCA。中年以降に発病し、進行性の小脳失調を呈し、オリーブ核、橋の灰白質、中小脳脚の変性、萎縮をきたす。脊髄小脳変性症の中で最も多く、全体の35%を占める。初期には起立・歩行の失調が主体で、進行とともに四肢の協調運動障害、眼振、不明瞭発話、断綴性発話といった構音障害などが加わる。5年以内に錐体外路症状が加わることが多く、進行とともに小脳症状は目立たなくなる。

進行性核上性麻痺

進行性の核上性眼球運動麻痺(注視麻痺)、項部ジストニー、偽性球麻痺、認知症を呈する。初発症状は歩行障害、頻回の転倒、眼症状(物が見えずらい)、性格変化、記銘力低下であることが多い。体幹に固縮が強く四肢には比較的軽い、認知症の程度は軽く、忘れっぽさや思考の緩徐化、情動・性格の変化などが特徴で、皮質下認知症と呼ばれる。

もやもや病

Willis動脈輪を構成する両親の内頚動脈終末部から前・中脳動脈分岐部にかけての血管が徐々に狭窄・閉塞すると(原因は不明)、脳への血流が不足し、これを補うために側副血行路がつくられる。この側副血行路(もやもや血管)による代償が不完全であるために、脳虚血が生じたり、脆弱であるため破錠しやすく脳出血が生じたりする。

ニューロパチー

末梢神経障害。末梢神経には、シュワン細胞により構築される髄鞘を有する有髄神経と髄鞘を有しない無髄神経があり、12対の脳神経、31対の脊髄神経(運動神経、感覚神経)、自律神経で構成される。末梢神経障害とは、脊髄神経根(前根および後根)や脳神経根から末梢に至るまでの神経線維(軸索および髄鞘)の障害で、筋力低下、感覚障害、腱反射低下、消失がみられる疾患の総称である。神経細胞体障害、軸索障害、髄鞘障害に大きく分けることができる。

ミオクローヌス発作

陽性ミオクローヌスと陰性ミオクローヌスがある。陽性ミオクローヌスは突然の短時間の筋攣縮によって、体の一部がビクッと動く。好発部位は骨格筋、軟口蓋、眼球で、原因・代表疾患に亜急性硬化性全脳炎、クロイツフェルトヤコブ病、ミオクロニー発作、しゃっくりなどがある。陰性ミオクローヌスは不定期に脱力が起こり、一定の姿勢に固定しようとすると、振戦様の運動が起こる(固定姿勢保持困難)。羽ばたき振戦はこれに含まれる。好発部位は上肢、手首で、原因・代表疾患に肝性脳症、ウィルソン病、尿毒症などがある。

【参考文献】

著: 岩田 誠/鹿島 治雄「臨床神経学・高次脳機能障害学」

監: 廣瀬肇「言語聴覚士テキスト 第2版」,2012年

著: 岩田隆子「わかりやすい病理学」

著: 「病気がみえるvol7脳・神経」

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